ここから、時間を刻もう!(エピソード4)
昨年の11月、「みんなのいえ」は開設した。はじまって間もなく、1人目の入居男子がやってきた。入居して3日目の晩、その子が自分の身体を傷つけた。きっかけは、スタッフとの何気ない会話のなかにあった。何気ない冗談を交えての会話・・・まさか、この言葉が!?驚くスタッフと反対に、子どもの表情は固まり、視点が合わず、うなだれブツブツと独り言を言いはじめる。この子どもは、みんなのいえに来るまでの間、どれほどの暴力と抑圧状態でいたことか・・・心が傷つき、人を信用することが出来なくなった果ての姿・・・。この子の硬くなった表情がゆっくりとほどけていくまで、スタッフは寄り添い、ずっとそばに居て待った。1時間、2時間・4時間・・6時間・・・すると、子どもがゆっくりと口に出した言葉、「イヤだった・・・大人に決めつけられることが・・・俺の言葉を聞いてもいないのに」という一言。この一言に、この子が育ってきた家庭環境とそれを取り巻く大人、社会・・・これまでの損失経験が詰まった一言だった。この数日後、この子どもに、スタッフが声をかける。「今から一緒に、掛け時計を掛けよう。これまでではなく、これからを、この時計と一緒に新しい時間を、みんなのいえから刻みはじめよう」と伝える。あれから、1年、この子どもが冗談を言って地域の方や、スタッフと笑う。前を向いて生きることの喜びや、自分を大切な存在だと思えるようになれたこと。これまでよりも、これからを・・・みんなのいえの掛け時計は今日も時間を刻む。